研究の内容
 

 本研究は、リチウムイオン電池、電気2重層キャパシタ用途を目的としたナノメーターレベルで精緻に構造を制御する事によって従来の延長ではない異次元の機能発現を目指した新規炭素体『ナノカーボン』の科学と技術の開拓、確立である。形態的には0次元(粒子、(図3))、1次元(ファイバー、(図4))、2次元(フィルム)、3次元の各ナノ構造体炭素を対象とし、ナノ構造を制御した新規炭素へのLiの取り込みとその機構(図3)、カーボン・ナノ空間における分子や溶媒和したイオンの挙動を解明する。ことに環境問題、リサイクル性、環境負荷極小性を考慮した次世代型エネルギーデバイス用炭素体「ナノカーボン」研究が目標である。
具体的テーマは、
  1. 広く環境問題に寄与し得る超高容量リチウムイオン電池用炭素負極体(ナノカーボン)の研究と高容量リチウム導入・格納メカニズムの科学的立証(図3)
  2. 電子用、エネルギー貯蔵用途を目指した超大容量、ハイ・パワーキャパシタ用ナノポアー炭素体(多孔性ナノカーボン)の開発とナノ空間におけるイオンのドリフト挙動と電気2重層容量発現機構
  3. エネルギーデバイス用ナノカーボンの機能設計(図3,4,5)
  4. 研究の総合的評価・点検による効率的推進
以上によって、次のような成果が期待できる。
 すなわち、本研究は21世紀技術として重要な、環境分野を中心としてエネルギー、情報通信の各分野とも密接に関わると共に、我が国が伝統的に世界をリードしている電池等の重要産業領域の強化にもつながるものである。世界的に先導的な我が国のリチウムイオン電池やキャパシタの従来技術のブレークスルーと超高性能化に関わる独自の科学と技術の確立は焦眉の急であり、そのため各方面からの強い要請が寄せられている。ことに新しい発想に基づくナノカーボンについての基礎科学と応用の両分野の研究展開は世界的視野で貢献できるオリジナル研究としても、重要である。
 本研究の成果は自動車、電力など環境はもとよりエネルギー領域への広範な展開が可能であり、さらにエレクトロニクス分野でもリサイクル性や高寿命化などで環境負荷低減化などを通じて貢献できる。すなわち、電力、自動車はもとより石油、鉄鋼、電子機器、情報産業の分野からの強い期待に応えると共に、新規産業の創出にも寄与できよう。また、NiCdや鉛電池、コンデンサ産業等、技術変革が強く望まれている従来型の関連産業や化学工業にとっても、新技術についての認識とそこへの転嫁の機会を提供し得るもので、新産業基盤構築のためにも意義深いテーマと考える。
 本研究が企画する成果の内容・種類は、次のようにまとめられる。
  1. ナノ構造炭素体に関わる科学の確立と新素材産業の創出
  2. 新エネルギーデバイスの開発と新産業の誘発
  3. 既存エネルギーデバイス産業の強化と技術転嫁への機会提供
  4. 新炭素科学、新フッ素化学、層間化合物、表面科学、ナノ空間の物理、量子化学論等の基礎科学分野への貢献
  5. 科学的アプローチによる産業技術開発の触発と関連産業界による科学的貢献機運の増進
 
研究体制等
期 間:
1999年9月〜2005年3月
構 成:
プロジェクトリーダー 1名
コアメンバー 3名
サポートメンバー 8名
実施場所:
信州大学工学部電気電子工学科遠藤研究室
  
  
  
      
      
  
 
  図3  新炭素体“ナノカーボン”への超高容量Li格納モデル
 
 

  図4  超微粒触媒によって成長する”Endo fiber”とも呼ばれる気相成   長炭素繊維。中心の中空チューブ先端に種まきした触媒のナノメータ   鉄粒子が観察される。形状制御とエネルギーデバイス用新機能の発   現を目指す。
 
 
 


  図5  “Bをドープ(置換型)したグラファイトの構造モデル”。これによっ  てLiイオン電池の容量が20%向上でき、次代の負極としての可能性が  開拓されつつある。同様な応用をC-F等のフッ素系にも展開する。