電界放出は、固体表面に強い電界を加えることにより、電子を固体内に閉じ込めている表面のポテンシャル障壁を低くかつ薄くすることにより、電子がトンネル効果(tunneling effect)により真空中に放出される現象である。この現象を観測するためには、固体表面に非常に強い電場をかけなければならない。そのため、通常は電界の集中が起き易い先端を鋭く尖らせた金属針が用いられている。
カーボンナノチューブは、直径がナノメートルオーダーと先端が先鋭であり、化学的安定性・機械的強度に優れることから電界放出電子源に最適な材料であるとされている。既に、電界放出ディスプレイ(FED)や走査プローブ顕微鏡(SPM)などへの応用研究が進められており、従来の電子源と比べ大幅な機能向上が期待されている。 本研究室では、カーボンナノチューブの選択や様々な加工を施すことにより、優れた電界放出特性を示す材料の開発に努めている。