エネルギーとカーボン
生活を支えるスキマやアナだらけのカーボン
地球温暖化が世界的に問題となっており,原因となる温室効果ガスの削減は急務な課題となっています. そのため発電時に二酸化炭素の排出がない太陽光,風力,地熱といった再生可能エネルギーを用いた発電の普及・拡大が進んでいます. しかし,気候条件によって電気の供給量が大きく左右されるため,安定したエネルギー確保が問題点となっています.
「カーボン」と聞いてみなさんは何を思い浮かべますか?
カーボンは自然界に多く存在し,私たちの身近にも多様なカタチで存在しています. 近年では「低炭素社会」や「カーボンニュートラル」といった取り組みが活発に行われていますが,このカーボンは二酸化炭素を意味しており,HMLABが取り扱っているカーボンとは少し違います. しかしこれらの実現にカーボンは深く関わっており必要不可欠なのです. 多くの二酸化炭素が火力発電によって排出されるため,再生可能エネルギーを用いた発電や効率的な電気の利用が必要になっています. 再生可能エネルギーによる発電では,電気の供給量が時間と共に大きく変動するため,これらを安定化する必要があります. また利用する電気の量は多くの人が活動する昼間と,多くの人が休む夜間で大きく違い,夜間に余った電力を人が活動する昼間に利用する必要があります. これらの問題を解決し効率的な電気の運用をするために蓄電デバイスが広く利用されています. ここでは蓄電デバイスであるリチウムイオン二次電池と電気二重層キャパシタにおいて,カーボンがどのように応用されているかをご紹介します.
リチウムイオン二次電池
皆さんが日常的に使うスマートフォンの電源にはリチウムイオン二次電池が使われています. リチウムイオン二次電池では,電気を通さないセパレーターと呼ばれる膜をはさんだ二つの異なる物質(コバルト酸リチウムやグラファイト)間においてリチウムイオンを行き来させることで,電気を入れたり出したりします. グラファイトは層が積み重なっているカタチを持っているので層と層のスキマにリチウムイオンを蓄えることができ,電子とリチウムイオンを同時に吸って,同時に吐く機能を持っています. 鉱物中にも存在するグラファイトはコストも安く,日常生活で使われる電池の中で使われています. 他にもナノチューブやカーボンブラックと言った様々なカタチのカーボンがリチウムイオン二次電池に含まれており,カーボンなしには成り立たないデバイスです. 私たちはカーボンの専門家として持続可能社会の実現にむけてどのようなことができるか考えています.
電気二重層キャパシタ
電気二重層キャパシタ(Electric Double Layer Capacitor, EDLC)は電気を蓄えるデバイスのひとつです.急速充放電が可能,長寿命といった特長から現在注目されています. EDLCは一対の電極と電解液で構成されており,電極上に電解液中のイオンが級脱着することで充放電を行う蓄電デバイスです. しかし他の前述のリチウムイオン二次電池等と比較して蓄えられる電気の量が低いという問題点があります. EDLCが蓄えられる電気の量は電極の比表面積に大きく依存するため,多くのアナを持ち高い比表面積を持つ活性炭が現在用いられています. アナが多く比表面積が高い表面に多くのイオンが吸着するため,たくさんの電気を蓄えることができます. HMLABではどうすればアナの多いカーボンをつくることができるかを追求し,より高容量なEDLCを開発すべく日々研究を行っています.